債務整理法律ガイド

債務整理とは

借金をした人(債務者)は、借入先(債権者)に対して「借りたお金を返さないといけない」という義務を負っています。
この義務のことを少し難しい言葉で「債務」と言います。
債務整理とは、借金を調査・整理して正確な借金額を出し、裁判所へ申立あるいは借入先と交渉して、

  • 借金をゼロにする
  • 借金を減額する
  • 支払期間を延長し、支払いに猶予を持たせる
手続きのことです。
借金で苦しむ人の生活を立て直すために行います。

債務整理には、裁判所へ申立が必要な「自己破産」と「個人再生」、借入先と直接交渉を行う「任意整理」の3つの方法があります。

債務整理の対象外となるもの

税金、婚姻費用、養育費など、以下に挙げたものについては債務整理をしても減額・免責の対象にはならないため、債務整理後も支払う必要があります。

  • 税金
  • 年金
  • 健康保険料
  • 下水道料金
    (※生活に必要なライフライン(電気・水道・ガス)の料金のうち、下水道料金だけは債務整理の対象外となります。)
  • 婚姻費用・養育費
  • 悪意ある行為に対する損害賠償請求権
  • 罰金

自己破産・個人再生・任意整理の違い

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自己破産 個人再生 任意整理
裁判所に申立 必要 必要 不要
借金は ゼロになる 5分の1~最大10分の1程度に減額 将来の利息分をカット等
借金の理由 問われる 問われない 問われない
職業制限 あり なし なし
持ち家 処分 残せる 残せる
原則処分(価値が20万円以下の場合は残せる場合がある) 残せる場合もある 残せる場合もある
ブラックリストに 載る 載る 載る
官報に 載る 載る 載らない
新しいクレジットカードの作成 一定期間出来ない 一定期間出来ない 一定期間出来ない
手続きにかかる期間 6か月から8か月程度(同時廃止事件の場合) 1年(あるいはそれ以上) 6か月から1年程度
手続きにかかる費用 弁護士費用(裁判費用含む) 弁護士費用(裁判費用含む) 弁護士費用のみ

自己破産

自己破産とは、裁判所に申立をして、借金をゼロにしてもらう手続きです。
その代わりに自分の財産(生活するのに最低限必要なものを除く)のほとんどを処分しなければなりません。
自己破産後に得た収入や財産を借金の返済に充てる必要がないので、借金返済の負担から解放されるというのが最大のメリットですが、一部自己破産が認められないケースもあります。

自己破産が認められない主なケース

  • 借金の理由が浪費やギャンブルの場合
  • 破産手続において財産を隠したり、嘘の説明をした場合
  • 前回の自己破産から7年以内の場合 など

自己破産のメリット・デメリット

メリット
借金がゼロになる

任意整理や個人再生と違い、借金が残りません。

手続の期間が比較的短くてすむ

裁判所に申し立てをしてから認められるまでの期間が、個人再生に比べて短くてすみます。

デメリット
所有する財産を手放す必要がある

生活に必要な最低限の財産は手放す必要はありませんが、自宅や土地などの財産は処分しなければなりません。

職業に資格制限がある

警備員や生命保険外交員などの職業は、職を失う可能性があります。

借金の理由が問われる

給料にみあわない浪費やギャンブルが原因の場合、自己破産の申し立てをしても借金がなくならない可能性があります。

自己破産をしたあとの数年間は、新たな借金・クレジットカードの作成はできない

自己破産をすると信用情報機関に登録されてしまうため、一定期間借り入れができなくなります。

官報に掲載される

自己破産の手続きの流れ

表は横にスクロールできます

 弁護士
 あなた
ご契約後

 受任通知の送付

  • 各借入先(貸金業者など)へ「代理人として手続きを進める」旨の通知(受任通知)を送付します。
  • 契約時にお預かりしたクレジットカードを借入先に返却します。
  • これまでの取引内容がわかる書類(取引履歴)の開示を借入先に請求します。

 取り立てや督促が止まります

申立ての準備

 申立てに向けて準備を進めます

  • 利息制限法に基づいた引き直し計算を行い、正確な借金の残高を算出します。
  • 申立書類を作成します。
  • 書類の準備ができ次第、申立内容をあなたと一緒に確認します。

 必要書類の準備・打合せ

  • 申立てに必要な書類(家計簿、給与明細、預貯金通帳など)を準備し、弁護士に提出します。何の書類が必要かは弁護士よりご案内させていただきます。
  • 弁護士との打合せで申立内容を確認します。
自己破産申立て・手続きの分岐

 裁判所に申立てをします

弁護士はあなたの状況を把握したうえで、同時廃止として申立てるか、管財事件として申立てるかを決め、代理人として裁判所に自己破産を申立てます。

 弁護士からの連絡をお待ちください

不足書類があった場合には取得をお願いすることがあります。
申立て後、裁判所での手続きは、同時廃止と管財事件の2つのケースに分かれます。

破産手続開始決定

 破産手続開始決定が出ます

裁判所が申立内容を確認し、破産手続を開始するのが相当だと判断された場合には破産手続開始決定が出されます。
弁護士は裁判所からの破産手続開始決定の通知を受け取ります。

 弁護士からの連絡をお待ちください

破産手続開始決定が出ましたら弁護士よりご連絡いたします。また、破産手続開始決定が出ると官報に掲載されます。

免責審尋

 あなたと一緒に裁判官との面接に臨みます

免責審尋(裁判官との面接)が行われる場合があります。行われる場合には弁護士も同席し、あなたのサポートをします。

 裁判官と面接します

裁判官との面接が行われる場合があります。行われる場合には、弁護士も同席します。
主に、借金の経緯、反省の有無、今後の生活再建への意欲などを確認されます。
管財事件の場合には、債権者集会も行われます。

免責許可決定・委任契約の終了

 裁判所からの免責許可決定の通知を受け取ります

免責許可決定の内容をあなたにお伝えします。

 借金の返済義務がなくなります

免責許可決定が出ると官報に掲載されます。
ここで初めて借金の返済義務が免除されます。
弁護士との委任契約が終了となります。

個人再生

個人再生とは、支払える額まで減額された借金を原則3年間で分割返済する計画をたて、その計画が裁判所に認められた場合、計画通りに返済すれば、残りの借金が免除されるという手続きです。
住宅ローン以外の借金を5分の1~最大10分の1程度にまで減額することが出来ます。
大幅な借金の減額が見込めますが、計画に従って毎月必ず返済をしていく必要があるため、将来において継続的な収入を得られる見込みがある方が対象となります。
もしも返済期間中に返済ができなくなると再生計画が取り消され、元の借金全額を支払う義務が復活する場合もあります。

個人再生の利用条件

  • 継続的な収入があること
  • 借金の総額が5000万円以下であること(住宅ローンを除く)

個人再生のメリット・デメリット

メリット
自宅を手放さなくて良い

住宅資金特別条項を利用することで、住宅ローンを返済しながら債務整理ができます。
※住宅ローンの返済スケジュールを変更することもできますが、返済総額を少なくすることはできません。

借り入れの理由が問われない

浪費やギャンブルによる借金であっても、個人再生の制度が利用できます。

職業に資格制限がない

警備員や生命保険外交員などの職業の方でも、個人再生をすることができます。

デメリット
手続が完了するまでに時間がかかる

裁判所での手続が複雑なため、申立てをしてから実際に再生計画に沿った返済を始めるまでに1年(あるいはそれ以上)かかる場合があります。

個人再生をしたあとの数年間は、新たな借金・クレジットカードの作成はできない

個人再生をすると信用情報機関に登録されてしまうため、一定期間借り入れができなくなります。

官報に掲載される

個人再生の手続きの流れ

表は横にスクロールできます

 弁護士
 あなた
ご契約後

 受任通知の送付

  • 各借入先(貸金業者など)へ「代理人として手続きを進める」旨の通知(受任通知)を送付します。
  • 契約時にお預かりしたクレジットカードを借入先に返却します。
  • これまでの取引内容がわかる書類(取引履歴)の開示を借入先に請求します。

 取り立てや督促が止まります

申立ての準備

 申立てに向けて準備を進めます

  • 利息制限法に基づいた引き直し計算を行い、正確な借金の残高を算出します。
  • 申立書類を作成します。
  • 再生計画で予定される返済額の積立ての管理をします。
  • 書類が揃い、積立ても順調に進んだら、打ち合わせを行い、あなたと一緒に申立内容を確認します。

 必要書類の準備・弁済予定額の積立て

  • 申立てに必要な書類(収入証明、資産に関する資料、家計全体の状況がわかる資料、住宅ローン関連書類など)を準備し、弁護士に提出します。何の書類が必要かは弁護士よりご案内させていただきます。
  • 弁済予定額の積立てをします。
  • 書類が揃い、積立ても順調に進んだら、弁護士と打合せを行い、申立内容を確認します。
個人再生申立て

 裁判所に申立てをします

あなたの代理人として裁判所に個人再生を申し立てます。

 弁護士からの連絡をお待ちください

  • 不足書類があった場合には取得をお願いすることがあります。
  • 申立後、個人再生委員と面接を行うことがあります。
再生手続開始決定

 再生手続開始決定が出ます

裁判所が申立書を確認し、再生手続を開始するのが相当だと判断された場合には再生手続開始決定が出されます。
弁護士は裁判所からの再生手続開始決定の通知を受け取り、再生手続開始決定が出たことをあなたお伝えします。

 弁護士からの連絡をお待ちください

再生手続開始決定が出ましたら弁護士よりご連絡いたします。また、再生手続開始決定が出ると官報に掲載されます。

債権額の調査・確定

 裁判所から通知された債権額を確認します

裁判所から通知された債権届出書を確認し、債権額が正しいかを確認します。
債権額が違う場合には、裁判所への対応を行います。

 弁護士と一緒に、届け出られた債権額が正しいかを確認します。

再生計画案の作成・提出

 再生計画案を作成します

確定した債権額に基づき、再生計画案を作成し、裁判所に提出します。

 弁護士が作成した再生計画案の内容を確認します

再生計画案の決議・認可

 裁判所からの再生計画認可決定の通知を受け取ります

借入先の反対が一定割合に達しなければ裁判所は再生計画認可決定を出します。認可から約1か月後、再生計画が確定します。
再生計画認可決定が出たこと、確定したことをあなたにお伝えします。

 弁護士からの連絡をお待ちください

再生計画案の決議結果、認可決定について弁護士よりご連絡いたします。

委任契約の終了・積立金の精算

 積立金の精算・返金処理

預かっていた積立金から弁護士報酬等を精算し、残額をあなたに返金します。

 弁護士との委任契約が終了となります

積立金から弁護士報酬等を差し引いた金額が返金されます。

再生計画に基づく返済開始

 ご自身で返済を行います

再生計画に従って、各借入先への返済をご自身で行います。
途中で支払いが滞ってしまった場合には再生計画が取り消しとなり、元の借金全額を支払う義務が復活してしまう場合もあります。
返済が困難になった場合は、すぐに弁護士に相談してください。

手続き終了

 再生計画に沿った返済が終了すると、個人再生手続きは終了となります

ここで初めて再生計画で減額された分の借金の支払いが免除されます。

任意整理

任意整理は自己破産・個人再生と違い、裁判所を通さずに債務整理を行う方法です。
弁護士と借入先が直接、借金の減額・遅延損害金や将来の利息のカット・返済方法などについて話し合いをします。
長いあいだ高い利息を払っていた場合にはかなり減額されたり、過払い金を取り戻せることもあります。
話し合いがまとまって借入先との和解が成立すると、和解契約書が交わされます。
その後は、和解契約書に従って返済していきます。

任意整理のメリット・デメリット

メリット
裁判所を通さずに借金を整理できる

裁判所からの呼び出しなどがないため、他の債務整理と比較すると、時間拘束が比較的少なくてすみます。

職業に資格制限がない

警備員や生命保険外交員などの職業の方でも、任意整理をすることができます。

デメリット
借金の額があまり減らないことがある

もともと低い金利で借りていた借金は、弁護士が交渉しても借金があまり減らないことがあります。

借入先が話し合いに応じない可能性がある

任意の話し合いなので借入先が話し合いに応じなければ交渉はできません。

任意整理をしたあとの数年間は、新たな借金をしたりクレジットカードを作ったりすることができない

任意整理をすると信用情報機関に登録されてしまうため、一定期間借り入れができなくなります。

任意整理の手続きの流れ

表は横にスクロールできます

 弁護士
 あなた
ご契約後

 交渉方針決定・受任通知の送付

  • あなたと話し合い、交渉方針を決めます。
  • 各借入先(貸金業者など)へ「代理人として手続きを進める」旨の通知(受任通知)を送付します。
  • 契約時にお預かりしたクレジットカードを借入先に返却します。
  • これまでの取引内容がわかる書類(取引履歴)の開示を借入先に請求します。

 取り立てや督促が止まります

  • クレジットカードは利用できなくなります。
  •  手続き中の禁止事項
  • 弁護士としっかり話し合い、任意整理でどのような和解を目指すか(例えば、「将来発生する利息をなくして、毎月いくらずつ、何年間で返済できるようにするか」など)の具体的な目標(これを「交渉方針」と呼びます)を一緒に決めます。
交渉準備

 借入先との交渉に向けて準備を進めます

  • 利息制限法に基づいた引き直し計算を行い、正確な借金の残高を算出します。
  • 返済予定額の積立ての管理をします。

 弁済予定額の積立て

予定される返済額を毎月確実に支払えるかどうかを確認するため、弁護士名義の口座に指定された金額を積み立てていただきます。
借入先との和解が成立し、返済を開始するときに弁護士報酬を差し引いた金額をご返金いたします。

借入先との交渉・和解

 借入先と交渉します

  • あなたと一緒に決めた交渉方針に沿って借入先との交渉を行います。
  • 交渉方針の範囲内ですべての借入先との和解が成立しましたら、あなたに和解の報告をします。
  • 交渉方針から大きく外れる条件しか提示がなかった場合にはあなたに状況を説明した上で和解を進めるかどうかを相談して決めます。

 弁護士からの連絡をお待ちください

  • 弁護士からの和解内容の報告を受け、確認します。
  • 交渉方針から大きく外れる条件だった場合には弁護士と相談して和解を進めるかどうかを決めます。
委任契約の終了・積立金の精算

 委任契約終了

預かっていた積立金から弁護士報酬等を精算し、残額をあなたに返金します。

 弁護士との委任契約が終了となります

弁護士より和解合意書を郵送いたしますので保管してください。積立金から弁護士報酬等を差し引いた金額をご返金いたします。

和解内容に基づく返済の開始

 ご自身で返済を行います

和解契約で合意した内容に従い、各借入先への返済をご自身で行います。
返済が困難になった場合は、すぐに弁護士に相談してください。

返済完了・手続き終了

 任意整理手続き終了

和解契約で定められた期間、計画通りの返済がすべて完了すれば任意整理の手続きが終了となります

過払い金返還請求

過払い金とは、払いすぎた利息のことです。
利息制限法では借入先がお金を貸したときにつけることができる金利の上限が、

  • 10万円未満 年20%
  • 10万円以上100万円未満 年18%
  • 100万円以上 年15%
と決まっています。
しかし、借入先が法律で決められた利息よりも高い金利で貸し付けを行っていた場合、「支払わなくてもいい利息を支払っていた」ということになるので、払いすぎた利息の返還を求めることができます。

過払い金返還請求の流れ

表は横にスクロールできます

 弁護士
 あなた
ご契約後

 受任通知の送付

  • 各借入先(貸金業者など)へ「代理人として手続きを進める」旨の通知(受任通知)を送付します。
  • 契約時にお預かりしたクレジットカードを借入先に返却します。
  • これまでの取引内容がわかる書類(取引履歴)の開示を借入先に請求します。

 取り立てや督促が止まります

現在利用中のクレジットカード会社に対して過払い金請求を行うと、そのカードは利用できなくなります。

引き直し計算

 正確な過払い金額を算出します

利息制限法に基づいた引き直し計算を行い、正確な借金の残高と、過払い金が発生している場合には過払い金の金額を算出します。

 弁護士からの連絡をお待ちください

弁護士より引き直し計算の結果(過払い金がいくらになるか)をご報告いたします。

過払い金返還請求

 借入先と交渉します

計算の結果、過払い金が発生していることが判明した場合、借入先に対して過払い金の返還を求め、金額と支払い時期について交渉します。
返還に応じない場合には、裁判を起こすことも検討します。

 弁護士より交渉状況をご報告いたします

裁判に移行するかどうかなど、重要な判断について弁護士と協議し、意思を伝えます。

借入先と和解

 和解内容についてあなたに確認します

交渉でも裁判でも、最終的に借入先が返還に応じる場合には、その和解内容(金額と支払い時期等)について承諾できるかどうかをあなたに確認します。
あなたの承諾を経て、借入先と和解します。
交渉で和解した場合には借入先と和解契約書を交わします。裁判で和解した場合には裁判所から和解調書を受け取ります。

 和解内容に承諾できるか否かを検討します

弁護士が和解内容(金額と支払い時期等)についてご説明いたしますので、承諾できるか否かを検討して弁護士に伝えます。
承諾した場合には、弁護士が和解手続きをします。

過払金の返還・委任契約終了

 過払い金の精算処理をします

弁護士名義の指定口座に過払い金が振り込まれますので弁護士報酬を差し引いた金額をあなたの口座へ振込みます。
委任契約が終了となります。

 過払い金の振込を確認します。

回収した過払い金から弁護士報酬を差し引いた金額をあなたの口座へ振込みます。
弁護士との委任契約が終了となります。